鳥海山 湯ノ台コース 2007.01




伏拝岳から湯ノ台コースの斜面を下るテマーカーの千田さん



 山 域 鳥海山 湯ノ台コース (七高山 2229.2m)  ※スライドショー
 山行日時 2006年12月31日(日)〜2007年1月2日(火) 
 天 候 12月31日 曇り 1月1日 曇りのち晴れ 2日 曇り
 メンバー 木村 千田 坂野
 行 程 12月31日 湯ノ台〜宮様コース〜滝ノ小屋 1月1日 滝ノ小屋〜河原宿〜伏拝岳 〜七高山〜伏拝岳〜湯ノ台コース〜滝ノ小屋 1月2日 滝ノ小屋〜湯ノ台

 鳥海山は日本海に面した独立峰で、冬季の間は悪天候続きで天候が安定せず、12月〜3月中旬頃までは山頂の姿を見せることは少なく、登頂のタイミングが難しい山として知られている。山頂に至る一般的なコースは南面の湯ノ台コースで、滝ノ小屋(1280m)を利用して登頂を狙う地元の方が良く入っている。最近は温暖化の為か比較的晴天に恵まれる事も有る様だが、晴れるのは1ヶ月に1回位と言われている。まして一日中姿を見せる日はなお更少ない様だ。

 今回の予定は七高山からの滑降だったが、幸運にも2日間の好天に恵まれ予定どうりに登頂し、予想以上に快適なパウダースキーを満喫することが出来た。春スキーシーズンのこのコースは南面の為ブッシュが露出し、スキーコースとしては殆ど人気のない不遇な存在だが、この時期となると見違えるような素晴らしいコースになる。

12月31日 湯ノ台12:10〜宮様コース入り口(山雪荘前)14:38〜滝ノ小屋16:10 1月1日 滝ノ小屋5:58〜河原宿6:45〜伏拝岳12:06〜七高山11:05 11:36〜伏拝岳12:06〜滝ノ小屋12:50 1月2日 滝ノ小屋11:30〜山雪荘前12:15〜湯ノ台13:35


12月31日
 メンバーのスケジュールの為湯ノ台出発は12:00を過ぎていたが、幸い曇りながらも山頂方面の視界が良く効き、しかも湯ノ台には先行者の車5台が有り、立派なスキーのトレースが続いていた。出発すると単独の日帰り登山者が降りてきたが、4人のメンバーが先行して今日は滝ノ小屋泊まりの様だ。積雪は少なくて40〜50cmといった所だが、問題のへピンカーブは直登可能でペースがはかどり、休みなしでどんどん進む。荒木沢橋手前の山雪荘前でトレースは2分し、片方は山雪荘へと続き、もう片方は橋の手前から左に入って滝ノ小屋に至る宮様コースを辿る。

  
 
升田側から入ればもっと近かった 積雪は40〜50cmと少ない 橋の手前から左の宮様コースへ入る
 
 ここは荒木沢と澄郷沢に挟まれた狭い尾根状の斜面を辿り、滝ノ小屋へ直登する明瞭なスキーコースだが、やはり雪不足の為に潅木が埋まりきらず下部は鬱陶しい。ただ傾斜が緩く歩き易いので、まもなく駐車場のトイレが右前方に見え出すと森林限界となり、風で締まった斜面をジグを切って上がると小屋が見えた。次第に西側に青空が見え出して天候は明らかに回復基調となり、明日のスキーには期待が持てそうな気がした。

 到着すると小屋の中には先行していた地元のテレマーカー4名がおり、既に宴会たけなわと言う雰囲気で賑やかだった。ラッセルしてもらったお礼を言い、持ち込んだ正月向けの食材を取り出してして我々も後に続いた。しかし小屋の中は予想以上に寒さは感じず、風も無く静かな夜が深けていった。

先行者のトレースには感謝 森林限界から滝ノ小屋へ続く斜面 約4時間で滝ノ小屋に到着
 1月1日
 昨夜は何時もの様に盛り上がってしまったが、3:30に起床して身支度を整え6時前に出発する。外はまだ暗く風もやや強いが青空が覗き、今日は高気圧が張り出してまたとないチャンスだ。小屋からは夏道の右から尾根上の斜面にコースを取り、所どころ標識を打ちながら河原宿を目指す。部分的にクラストしているがシールも効いて、コンパスで進路を確かめながら順調に前進する。次第に明るくなって来るとガスも晴れ、視界良好となってやがて平坦で広くなる。

 背後を振り返るとうす曇の空から朝日がまぶしく差込み、次第に風も弱まって来て河原宿の周辺が広く見渡せる様になる。河原宿周辺では夏道からおよそ200m右側を辿っていたが、傾斜が出てきた伏拝岳方面の直登コースに進路を取り、しっかりシールを効かせながら上部を目指す。すると突然ガスが晴れて山頂方面が姿を現し、気分は次第に高揚して登頂意欲があふれ出す。ここで七高山までの道は開けた。

 
朝5:58AM出発で七高山を目指す 河原宿上部で日の出を迎える
雲海から太陽と青空が顔を出して期待が膨らむ 
外輪山まで素晴らしい斜面が連続する
 
 覆われたガスから抜け出すと暖かい太陽が現れ、その向こうには眩しい雲海が広がる別世界が待っていた。あまりにも出来過ぎた光景に少し戸惑ってしまい、思わず我を忘れてデジカメのシャッターを何枚も切る。今までの正月山行で初日の出など殆ど意識した事はなかったが、これ程ロケーションに恵まれた素晴らしい光景も少ない。程よくクラストした斜面の先には見事な1枚バーンが広がり、ここから先はスキーヤーの為の桃源郷、あるいは聖地といった言葉が良く当てはまる。滝ノ小屋からほぼノンストップでここまで上がって来たが、いい加減疲れてきたはずの体はそれを感じさせず、気持ちだけは外輪山方面へと向いて高ぶってくる。

 今回はファットスキーの「ポケロケ」を選んで来たので、外輪山に至る急な斜面では慎重を期してアイゼン歩行に切り替える。スキーアイゼンがあれば強引に登り切れるだろうが、テレマーカーの千田さん、山スキーの木村さん供に持ち合わせてなく、全員スキーを担いでのアイゼン歩行となる。この光景は30年くらい大昔の富士山の雪上訓練を思い出させる。ただ稜線直下特有のブルーアイスも無く、富士山特有の突風が吹かないだけ天国とも言える。
 
ソロバン尾根左側の1枚バーンを目指してスキーで行く 風も次第に弱まり、雲海に月山・朝日が姿を現す

途中からアイゼンをきしませながら伏拝岳を目指す あまり風に叩かれた様子も無いきれいな斜面
 
 2年ぶりに履いたアイゼンをきしませながら快適に上って行くと、外輪山の入り口の伏拝岳直下に到着する。ここで初めてザックを下ろし北面の鳥越川方面を覗き込むと、眼下には息を呑むような見事な光景が広がる。眩く広大なカール状の谷が何処までも続き、日本海を全て覆い尽くした雄大な雲海へと続いている。暖冬の今年の正月とはいえ、そこは春スキーでは決して見せない荘厳で美しい別世界だった。

 しかしながら正月と言うのに風も殆ど弱まり、青空には優しい太陽が輝く姿など鳥海山では想像した事も無く、何か拍子抜けしたと言うのが当てはまっている。少し気温も上がってきてのんびりムードとなり、缶ビールがあれば一本空けてこのまま昼寝でもしたくなる雰囲気だ。遥か下の滝ノ小屋方面を見下ろすと、同じ小屋泊りだった4人のテレマーカーが河原宿を目指し、我々の辿ったコースを上がって来るのが見えた。

飯豊、朝日、吾妻方面まで見通しが効く 外輪山から千蛇谷方面を見下ろす
外輪山を経て七高山を目指す 七高山直下の最後の登り
 
 外輪山から七高山までは多少のアップダウンが有るが、幸い風も強くないのでそのままスキーを担いで歩き出す。所どころ吹き溜まった雪では膝下位のラッセルだが、左側は鋭く切れ落ちた千蛇谷カール、右には昨年4月に滑った本白沢方面がうかがえる。その無垢の白い広大な大斜面は何処までも続き、スキーヤーにとっては美しいビックスケールのパウダーコースに見える。雰囲気的には南蔵王のコガ沢斜面を初めて見た時と似ているが、そのスケールはこれを遥かに上回る素晴らしい光景だった。

 出発してから5時間後の11:00に後続が七高山に到着し、例のハイオク梅酒を取り出して正月のお神酒を上げる。白い大きなドームの新山は目の前だが、今回は山頂をパスして早速滑降の準備に取り掛かる。(後で考えれば新山の山頂を踏んでおけば良かったと後悔している。)後から上がって来たテレマーカーの4人は、外輪山直下の斜面から既に下降した後だった。

東面のビア沢・本白沢方面のパウダー大斜面 七高山からスタート
伏拝岳直下の斜面を下る テクニカル&パワフルのテレマーカー千田さん
 
 七高山からはシールをつけたままでスタートし、外輪山の多少のアップダウンを繰り返して下りて行く。暖冬の為かうるさいシュカブラもあまり見られずに、上ノ台コース、鶴間池コースなどの東斜面をゆっくり鑑賞し、なごりを惜しみながら元来た湯ノ台コースへと急ぐ。
伏拝岳の直下でシールを外すと、後は滝小屋を目指して連続した斜面を滑り込んで行く。トップはパワフルでしかもテクニカルなテレマーカーの千田さん。低重心で実に安定したスタイルは良く板も走り、多少のシュカブラなど物ともせず飛ばして行く。ベストショットを捉えようとデジカメを構えるが、とてもスピードに追いついて行けずにどうも決まらない。
 
 一方年季ばかりではなく熟練した腕前の木村さんは、やはり低い姿勢からリズミカルなショートターンを刻んで後を追う。斜面は多少ブッシュの先端が出ている程度で、殆どは新雪が吹き溜まって締まり加減のパウダースキーをが満喫できる。外輪山直下のルンゼどうしに下降して行くが、途中のシュカブラを嫌って右に逃げ、後は河原宿を目指してルンゼ状の斜面をまっしぐらに飛ばして行く。やはり、この様なフラットな大斜面では豪快なロングターンが良く似合う。

 河原宿から見上げる鳥海山南面はどっしりとして威厳が有り、山全体がスキー場という様な環境のこの山は、スキーヤー・ボーダーにとって聖地と言っても言い過ぎではない。木村さんが口癖のように言いう「鳥海山は宝の山」とは決して嘘ではない。

春には想像できないパウダー斜面 パウダーを蹴散らし下りて行く
雲海を目掛けて滑り込む木村さん 河原宿上部のパウダー斜面
 
 河原宿から下は滝ノ小屋までカール状のパウダー斜面となっており、これまたスキーヤーの為にある様な素晴らしいコースだ。ロングターンでどんどん加速して行くと、小屋まではあっという間の瞬間だった。小屋に着いてみると一人のスキーヤーが今から上部を目指して上がって行くのが見えた。小屋に入ろうとした時突然2階の窓から声をかけられ、「今夜は泊まって行け。酒はある。」とのお話。昨日の大盛り上がりで調子に乗って酒を飲み干し、ガス欠も重なって今日下山予定だった我々には天国からのお誘いだった。

 
 途中で見かけたテレマーカーは知人の西川山岳会のYさんで、Gさんと行動を供にして滝ノ小屋入った模様。馬力のあるY氏はあっという間に外輪山直下に到達し、一気に飛ばして小屋まで戻ってきた。それでも物足りない様で、もう既に酒の入り始めた千田さんと一緒になり、裏のカール状斜面を再び上がって行った。我々2人は遠慮なく酒・肴を頂きながらこの方の話を伺ったところ、この20年間毎年滝ノ小屋で正月を過ごしておられるGさんで、地元の山屋さんには広く知られた有名人の様だった。なんらお返しするものが無く恐縮しっぱなしだったが、酒は無類の強さで、私などは宴たけなわの最中に沈殿してしまった。唯一最後までお付き合いした千田さんは、後になってどの位酒が入ったのか記憶に無い様子だった。なお、この話の中で興味深かったのは、30年以上前の2月の厳冬期、酒田のパーティーが4日間で上ノ台コースを完登していたと言う事実だった。

1月2日
 流石に朝食はスロースタートだったが何時の間にか焼酎が出回り、朝から第2弾の宴会模様となってしまう。運転手の千田さんには申し訳ないが、せっかくの機会なので我々もそれに素直に従うまでだった。外に出てみると風も弱まり、なんと昨日の様に青空に鳥海山の山頂が覗いている。全員でようやく荷物を整理して宮様コースを下り始めたのは11:30AMで、鬱陶しい薮がらみの尾根コースを難儀しながら降りて行く。

 新雪荘前の荒木端で1本を入れ、後はすっかりトレースの残っている車道を滑り、のんびり流してゆくと大台野に到着した。しかしこのGさん、大台野で出会った盛岡の知人のパーティーに誘われ、再び山雪荘に上がって行ったのには恐れ入った。

河原宿から滝ノ小屋へ下降する 午後になって再び山頂が姿を現す

 
鳥海山 湯ノ台〜七高山 MAP